使徒座公報(AAS)上に掲載されている、聖体を手に授ける新方式を許可する典礼聖省からの書簡(AAS原文参照ページ)は「なぜフランス語なのか」という謎があります。
タイトル「REVERENDISSIME *」にアスタリスクが付いており、書簡文章末尾には「* Hanc Epistulam g. Congregatio pro Cultu Divino sua cuiusque lingua exaratam Indultum petentibus misit.」とラテン語で書かれています。
「この典礼聖省書簡は、『インドゥルトゥム(特典)』の要求を書き送った各々の言語によって書かれた。」との意味でしょうか?(ラテン語には全く自信がないです。g.も何の略語か不明です。)
大方そういう意味であれば、
① 典礼聖省による書簡はフランス語にて送られて、日本で翻訳された(= 各々の言語によって書かれた)
② 典礼聖省による書簡は原文のフランス語から日本語に翻訳された上で(= 各々の言語によって書かれた)、日本に送付された
のどちらになるかと思います。
②の場合、当時長江司教が典礼聖省委員でもあった(1)ことが関係しているのでしょうか。
※ ラテン語の文法に通じている方がこの文「Hanc Epistulam…」を読めば①か②かは明らかなのかもしれませんが。
そもそも論ですが、1970年6月20日付で典礼聖省へ「御聖体を手に授ける方式」の許可を申請してから、僅か1週間後の6月27日に許可が下りた(2)という期間の短さが不可解です。
日本からの許可申請文書が到着してから僅かの期間に許可を出したということは、指針『メモリアーレ・ドミニ』において「司教協議会が『新方式導入』を決定した理由・経緯を詳細に説明した文書を見て、聖座は注意深く検討する」(本箇所の要旨)と書いてある内容と反しています。
御聖体を手に授けようとする動きは、異常な状況によって取り巻かれていると思わざるを得ませんが、やはりブニーニ(当時の典礼聖省 秘書; 『メモリアーレ・ドミニ』と典礼聖省「書簡」にもブニーニの署名有り)=メイソン(説)(3)が想起されます。
※ 一応、(説)とつけておきます。
◆ 2018年8月12日追記
EWTN上の英語訳を見てみたら、「Note: in the Acta Apostolicae Sedis (pp. 546-547) the Instruction was accompanied by a sample of the letter (in French) which is sent to hierarchies who ask for and are granted permission to introduce the practice of holy communion on the hand.」と書いてあります。この注釈が正しければ、公式的には「フランス語の書簡サンプル」なんでしょうか。
また、つい今しがた、「御聖体を手に授ける新方式」導入に関する2018年の英語記事を発見したのですが(※ 記事とコメント欄のやり取りを見るに、記事を書いたベネディクト会士は「手」でOKと考えている方です)、最初に導入許可がおりたのはベルギーとのこと(4)。今までフランスが最初だと思っていましたが、確かにベルギーもフランス語が話される国です・・・。
『メモリアーレ・ドミニ』が公布された1969年5月29日の僅か2日後までにベルギーの司教協議会での秘密投票、許可申請、聖座での検討・許可まで終了したとは、驚くべき速さです。
Belgium, 31 May 1969
France, 6 June 1969
Germany, 6 June 1969
Chad, 18 September 1969
The Netherlands, 18 September 1969
・・・略・・・
Japan, 27 June 1970PRAY TELL – “Documentation: Approval of Communion in the Hand under Pope Paul VI”
注釈
(1) 1970年4月19日付けカトリック新聞より
(2) 参照『日本におけるミサ中の聖体拝領の方法に関する指針』 (発行日 2014年11月30日) p.4
(3) ブニーニの英語Wikipediaページにおける、メイソン説の編集合戦が興味深いです。
自称イエズス会士(1936年アメリカ生まれとUser pageに書いてある。写真有り)までもが2017年12月に編集合戦に参加しています。メイソン説を否定する論調で同説論者を「保守主義」だと書き加える等々、内容を大幅に書き換える形で。
(4) サイト「PLAY TELL」記事コメント欄でのイエズス会士コメントにより、典礼秘跡省公式サイトにおける機関誌(広報誌)『Notitiae』掲載ページ(※)に情報があると分かりました。参考までに掲載します。
※ 非常に重いです。
● 指針『メモリアーレ・ドミニ』と典礼聖省書簡:
Notitiae in v. 5 (1969), no. 48 (Sept/Oct), pp.347-353
● ベルギー、フランス、ドイツ等々への許可:
Notitiae in v. 5 (1969), no. 48 (Sept/Oct), p.361
● 日本への許可 (1970年6月27日): 1) Facultas permittendi ut sacra Communio in manu fidelium distribuatur, ad normam Instructionis 《 De modo sactam Communionem ministrandi》et adnexae Epistolae ad Praesides Conferentiarum Episcopalium (cf. A.A.S. 61, 1969 , pp. 541-547; Notitiae, 5, 1969, pp.347-353 Iaponia, 27 iunii 1970 (Prot. n. 2286/70).
Notitiae in v. 6 (1970), no. 57 (Sept/Oct), pp.332-333