1950年(昭和25年)1月29日付けカトリック新聞の一面トップ記事より。
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フリー・メーソンとは何か
フリーメーソンは一月七日参議院議長佐藤尚武氏[注・終戦時のソ連大使]ら知名の士に門をひらいた。会員は全世界に数千万を数えアメリカには三百万おり国境を越えた兄弟愛で結ばれているが唯物主義者や多神教徒は入会する資格がないという。この一連の修養機関でもあり社交機関でもあるフリーメーソンにカトリック信者が入会すると破門されるのはなぜだろうか。カトリック大辞典編纂会の資料によればフリーメーソンの正体は大要次のとおりである。
人類支配を企つ秘密結社 諸教皇繰返し警告
フリーメーソンとはすべての人種国家、宗教、社会などの諸制限を超越して、宗教的寛容、信教の自由、平和主義、全人類の一致する宗教をもとにして、人類の一致と世界市民の育成を行う団体であると自称する秘密結社である。
起源
フリーメーソンの起源は1175年、フランスからイギリスにゴシック式建築様式が伝わり、この設計、穹窿に関する技術上の秘伝を「自由な石工」だけが守り育てて来たのにはじまり、この建築士らは地方のギルドに加入せず、洗者聖ヨハネを守護者として仰いで、全国的な「自由なる石工信心会」を組織した。1356年「石工組合」の成立のときも、ひとり組合に加入せず、もっぱら、建築の秘伝および宗教・道徳・社会のことを教育した。
エリザベス王朝のときカトリック的精神が駆逐され、エドワード6世(1547)に至ってその信心会が解散し、その残党が「フリーメーソン」を組織し、教育団体として活動した。これは宗教的教育の色彩は全くなく、ただ社交・教養(人文主義・博愛)を目的としたにすぎなかったが、次第に錬金術、秘教など迷信的思想が入りこんだ。1650年人文主義が強化されるとともに普遍的博愛が弘まりソロモンの聖殿建設という形で現れ、「象徴的・思弁的・精神的フリーメーソン」は初めて1717年6月、洗者聖ヨハネの祝日に成立した。
1721年以来、自由思想をもった宮廷の人々や貴族らがこれに加入し、フリーメーソンは全ヨーロッパに弘まった。
彼らはカトリック教会に敵意を示すことにより、その頭角をあらわした。当時多くの人々は宗教的闘争に倦み、教会権威を嫌い、社会状態に不満を感じ、「秘密」の中に啓蒙を求め、人間的、自然主義的な社会を建設するため、フリーメーソンこそ適当な武器だと考えた。
沿革
1751年ヨークメーソンと合体、1813年英国連合大本部が成立、これによりますますフリーメーソンの宗教的中立性が強化、確立された。
更に各国のフリーメーソンの状態を見れば、北米では1730年イギリスの本部と変遷を共にし、ドイツでは皇帝フランツ1世(1751年)、フリードリッヒ2世(1738年)の加入によって強大化され、フランスでは1725年聖殿騎士修道会[= テンプル騎士団]と結合、聖殿騎士に由来する秘教的科学は、錬金術者、秘教者、魔術者、降神術者、巫術者の侵入を容易にした。この聖殿騎士制度は18世紀以来、全ドイツのフリーメーソンを支配した(1782年廃止)。
1783年にワイスハウプトが設立した啓蒙団[= イルミナティ]がドイツのフリーメーソンに入り、司祭や皇帝の無用論を主張した。
組織
次にフリーメーソンの組織制度は1738年ラムジーの演説によって見出される(アケーセー級)第1級とその変化した(エコセー級)第4級があり、1753年に(ロイヤルアーチ級)第14級が発案され、1801年チャールストン(南カロリナ州)はユダヤ人らとともに最高顧問級を立案、組織、普及した。1758年から1801年までこれらに尽力した人々はすべてユダヤ人である。この高級制度は一国が多数の大本部と派生する支部を有し、その頭に最高顧問をおき、その下に次のように高級支部が隷属している。
完成本部(4-14級)、ローゼンクロイツェル級(15-18級)、アレオパーク級(19-30級)、コンシストリウム級(31-32級)、最高[顧問]級(33級)
1874年5月9日イタリヤ大本部発行フライマウェル・ツァイトゥング・ライプチヒ[Freimaurer-Zeitung, Leipzig](フリーメーソン大辞典引用)に「フリーメーソンとは平和的名称のもとに敵を倒すことで、象徴とは戦の防具なり…―」とされ、「高級の職務内容は現実的な行動、目的、設定、計画の討議、決議である。ラテン国のフリーメーソンは15-18級は政治的クラブ、18級は純然たる行動支部である。19-30級は『人類の将来』で、人類の将来はフリーメーソンの勝利によって支配されねばならない」とある。
フリーメーソンは自分が高級会員であることを打明けてはならない。また会員相互や下級会員より上級会員を示してはならない。また会員は最高顧問から与えられた指令によって動き、最高顧問はすべて思想原則を一にするジュネーヴ同盟(1872年にはじまり5年目毎に独自の集会を開く)に結集される。
世界的に連る国際的フリーメーソンは巧妙な単一組織をもち、高級者が匿名による指導権をもち、また責任を避ける可能性が与えられている。
教義
このフリーメーソンの教義大要は、エンサイクロペディア・フリーメーソンによれば次の通り記されている。
「フリーメーソンには象徴主義と古規約があり、前者では精神的ロゴスは人類に光と生命を与えた。その光は闇、生命は死と呼び、先ずフリーメーソンの中から偉大な光を見出すよう入会者に約束する。そしてこの光で生きることを教える。またフリーメーソンは不明瞭を好み、組織が決して政治的、文化的目的や外的活動を象徴、明示するものではない。彼等がフリーメーソンに敵対する偏見はすべて壊滅する目的を有する。その偏見とはすなわち、祖国、国民、宗教民族等を固執するを云う。これらはすべてマルクス主義の無神論運動に於て、実行形態が与えられ、その共同目的は自由、平等、博愛である。
後者では愚かな無神論を唱え、霊魂不滅の信仰を欠除し、『賢明』という根拠から官憲への服従を教えている。」
教会の態度
最後にカトリック教会はフリーメーソンに対し次の通りの態度を示している。
カトリック諸国ではフリーメーソンの主目的が「宗教改革」の仕残しを遂行するにあると観察し、クレメンス12世は1738年教皇令インネミネンティ[In Eminenti; イン・エミネンティ]を発し、フリーメーソン所属の信徒はすべて破門に付すると禁令した。これはフリーメーソンが表面上宗教的中立を示しているが、教会の教理に反し教会を破壊に導く純自然主義的な性質と、無数の仮面の下に社会各層、各分野に潜入するために戦慄すべき厳罰によって強制的に行われる破壊的行為の宣言、秘密結社の国内的、国際的秩序におよぼす危険性がありと明示した。
諸教皇もかかる排除および警告を繰り返し、レオ13世は回勅ウマーヌム・ジェヌス[Humanum Genus; フマヌム・ゲヌス](1884年)を発令した。また聖会法2325条にも「教会或は合法的国権に対し陰謀を企てるフリーメーソン其の他之に類する他の結社に加入するものは破門に付せられ、その赦免は教皇に保留せらる」と規定してある。
トップ画像の通り、これは所謂「陰謀論」の書籍ではなく、カトリック新聞に掲載されていたフリーメイソン解説記事です。
記事内容は、リード文にある通り、後年出版される『カトリック大辞典』Ⅳ巻(1954年発行)における「フリーメーソン」項目の大要です。
尚、この『カトリック大辞典』の同項目中では、「フリーメーソンは本部の手中にある国家(英米の如き)に対しては闘争的ではないが、その支配をうけぬ国家に対しては反逆は彼等の権利および義務なりと宣言するものである。フランス大革命を初めとして、フリーメーソンの黒幕に計画指導されなかった革命は殆どないくらいである」(p.616)とも記載されています。
大辞典の当該記事は全4ページ、参考文献数は30程度と、非常に力が入っています。執筆者はG. Sinthern S.J.です。(日本のイエズス会史本の帰天会員リストにはご氏名が掲載されていないので、大辞典事業に協力されたドイツ在住のイエズス会士だったのだろうか?)
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