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特別形式ミサはアメリカのみならずオランダ他の外国で振興中(各国データあり)

2020年1月4日の記事にて言及した1940年代前半における荘厳ミサより、約75年が経過した現代。伝統的なラテン語ミサ(1)として特別形式ミサ(トリエント・ミサ)は今も献げられています。

インターネットで調べてみたところ、特別形式ミサを執行している世界各地の聖堂とミサの時間の情報を掲載しているWebサイト「Latin Mass Directory」がヒットしました。サイトにアクセスしてみて、驚きました。

アメリカなどでは3桁の箇所の聖堂で特別形式ミサが献げられている

Webサイト「Latin Mass Directory」;2020年2月12日時点の情報

特別形式ミサを執行している聖堂(月に1~複数回の聖堂含む)は、アメリカに590、フランスに195、英国に166箇所あるとの情報です。毎主日に同ミサを執行している聖堂に限定しても、アメリカに358、フランスに104、英国に58箇所です。聖ピオ十世会の聖堂はデータに含まれていないにもかかわらず(2)、これほどまでに数が増えているとは意外でした。

このサイトの掲載情報すべてが最新データではないと思われますが(実際、日本に関する情報は古く、池田敏雄神父様が特別形式ミサを立てられていた頃の情報が掲載されたままです)、トップページの最新更新情報欄によれば頻繁に更新されているので、アメリカなど主要国に関する情報の信頼性は比較的高いものと考えられます。


さて、当該聖堂数の情報に各国のカトリック信徒数のデータ(3)などを加えて一覧表にしてみました。

毎主日の「特別形式ミサ」執行聖堂数が多い国

特別形式ミサ(トリエントミサ)の毎主日執行聖堂数が多い国

※ 画像サイズの都合上、特別形式ミサ=「TLM」(Traditional Latin Mass)として表記。

毎主日に特別形式ミサを執行している聖堂が多い国としては、アメリカ、フランス、イギリスがトップ・スリーです。その後には、ブラジル、ポーランド、イタリアが続きます。アジアの国としてはフィリピンが11位につけています

この一覧表において最も注目すべき点は、15位にオランダがランクインしており、毎主日に特別形式ミサを執行している聖堂が6箇所もあることです。毎主日の条件に限定しなければ16箇所です。あの「進歩的な」オランダが!1950年代より既に「開かれた教会」を目指し、第二バチカン公会議閉会前から聖座の許可なく「手による聖体拝領」を導入しはじめ(閉会後との情報もあるが、ブニーニの著書等によれば1965年10月時点では既に導入済み(4))、悪名高い「オランダ・カテキズム」(新カトリック教理)を出版し、その他も典礼、教理教育、司牧において多様な実験を行ったオランダが、です(5)

オランダに加えて、ドイツ、ベルギー、フランスも聖座の許可なしに御聖体を信徒の手に授けはじめた「進歩的な」国ですが、全て15位以内にランクインしています。

欧米の「進歩的な」「開かれた」「刷新された」実践を早々に取り入れていった日本は、なぜ現代欧米における特別形式ミサ振興の動きには即座に倣わないのでしょうか。

「特別形式ミサ」の普及度が高い国

特別形式ミサ(トリエントミサ)の各国普及度リスト

次に、特別形式ミサの普及度が高い国順に並べてみました。普及度については単純に、毎主日に「特別形式ミサ」を執行している聖堂1箇所あたりの信徒数が小さくなるほど「普及度が高い」と考えました。

1位はカトリック信徒が18万人しかいないスウェーデンであり、信徒3万6千人あたり1箇所の聖堂がある計算となります。

※ 参考: 日本における日本人信徒数は約44万人。日本に住む外国人信徒数は日本人よりも多いと言われている。(日本人と外国人信徒で計100万人近くとの情報もあり。)

日本の各教区あたりの日本人の信徒数は多い順から東京教区 約9万8千人、長崎教区 約6万1千人、横浜教区 約5万5千人なので(6)スウェーデン、ニュージーランド、イギリスの普及度は「日本のどの教区にも最低1箇所は、毎主日に特別形式ミサを献げる聖堂がある」ようなものだと言えば想像しやすいかもしれません。

これら三国は、人口に占めるカトリック信徒の割合(表中の「信徒率」)が1.8~10.0%とそれほど高くないことも、日本の信者としては興味深い情報です。

また、日本と同じアジアの国としては、シンガポールが5位にランクインしています。同国は信徒数が約16万6千人のみ、且つ信徒率2.9%でありながら、特別形式ミサを毎主日に献げている聖堂は1箇所ございます。

【東・東南アジア】毎主日の「特別形式ミサ」執行聖堂数が多い国

特別形式ミサ(トリエントミサ)の東アジア、東南アジアにおける現状一覧

こちらは、東アジアと東南アジア諸国に限定した一覧表です。(カンボジア、ブルネイ、北朝鮮、モンゴルは信徒数が少ないので掲載せず。)

前述のように、アジアではフィリピンの聖堂数が突出していますが、次点は中国です。中国共産党政権下の教会でさえも特別形式ミサを受容しています。恐ろしいことに、特別形式ミサにおいては、中国共産党よりも酷い対応を日本の教会(高位聖職者)はしているのだと言えましょう。

最後に:日本における召命増のための特別形式ミサ正式導入と、通常形式における跪きの回復

外国では特別形式ミサの執行数が増えているらしいという情報はこれまで見聞きしていましたが、具体的な聖堂数の数値で見るとインパクトがありました。

増加の理由としては、特別形式ミサを求める人が増えていることに加えて、召命が多いことも背景にあるようです。ブログ「カトリの日記」さんの2019年12月7日の記事には、「召命が多いから」という理由もあり、パリなどの教会では特別形式ミサが日常化しているとの話を記載されています。

11月にあった特別形式ミサは、外国から訪日してくださった神父様の司式だったのだが、ミサ後の懇談で、特別形式ミサについての海外事情について興味深い話を聞いた。パリなどの教会では、特別形式ミサも日常化していて、通常形式ミサと特別形式ミサが同じ教会で時間をずらして行われているらしい。

   〔略〕

「特別形式を求める人が増えているのですか?」とたずねたらちょっと予想外の答えだった。

「(特別形式の宣教会の)召命が多いから」らしい。

「需要」もさることながら「供給」が多いということだった。

※ 当サイト管理人は上掲のミサ運営団体とは関係がなく、ブログ記事を読んで知った話です。

召命激減の問題に直面している日本の教会は、打開策として特別形式ミサを正式に導入する時期にきているのではないでしょうか。

そして、特別形式ミサを振興させるためには、通常形式における会衆の跪きの所作(神に対してへりくだる、礼拝の姿勢)の回復早急に実施すべきだと考えます。日本の「適応版」通常形式ミサにおいて、跪いてへりくだる所作がない現状のままでは、幾度も跪いて祈る特別形式ミサの価値が、一部ではない多くの人に理解されることは難しいと思われるからです。

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(1) 英語圏では、Traditional Latin Mass(伝統的なラテン語ミサ)を略して「TLM」と表記されることも多いです。

(2) サイトのトップページには、「聖座の承認を得て1962年(またはそれ以前の)ローマ・ミサ典礼書に従って執り行われるすべてのミサ聖祭」(“All Masses celebrated according to the Missale Romanum 1962 (or earlier) with the approval of the Holy See”)との副題がついています。

(3) データについての備考

・サイト上の聖堂数データは、2020年2月12日時点の数値。日本については、当サイト管理人にて最新値の「ゼロ」へと修正した(不定期執行の状況)。ベトナムはサイト上では聖堂数が記載されていないが、聖ペトロ会の拠点聖堂が引っ越しのため2020年の5-6月より使用できないとの注釈事由だと思われるので、1聖堂としてカウントした。

・各国の人口はWikipedia上のデータを使用。日本の人口のみ政府の公式情報(総務省統計局;2019年8月1日現在の最新確定値)を使用。

・信徒数はWikipedia上のデータを使用。信徒数データに幅があるときは、最小値を使用。(例:アメリカの信徒数データ66,000,000-72,600,000の場合は、66,000,000人とした。)日本の信徒数はカトリック中央協議会「カトリック教会現勢」の最新値(2018年12月31日現在の値)を使用。

(4) Annibale Bugnini, The Reform of the Liturgy 1948-1975, Minnesota, Liturgical Press, 1990, p.640.

Federico Bortoli, La Distribuzione della Comunione sulla Mano: Profili Storici, Giuridici e Pastorali, Siena, Edizioni Cantagalli, 2018, pp.76-77.

ご参考: 手による聖体拝領はオランダの背教者どもから始まったPart 2 (Webサイト「護教の盾」の記事)

(5) オランダについては以下文献を参考にした。
澤田昭夫『革新的保守主義のすすめ 進歩史観の終焉』PHP研究所、1990年、pp.165-166
カトリシズム荒廃の教訓 聖なるものの復権のために (五)デトロイトの原型・一九六六年のノルトワイカーハウトより)

(6) カトリック中央協議会出版部編『カトリック教会情報ハンドブック』カトリック中央協議会、2019年、pp.2-3