1月20日にバチカン・ニュース(イタリア語版、英語版など)が報じた通り、同日よりバチカン保健局は、バチカンの保護施設に住むホームレスの人たちにも新型コロナウイルスワクチン接種を始めました。本件については、2021年1月31日付けカトリック新聞の一面でも報じられています。
保護施設に住む最初の25人が1月20日、接種を受け、数日中に他の人たちにも接種される、とバチカンは明らかにした。
1月31日付けカトリック新聞『新型コロナワクチン バチカン保護施設の路上生活者にも接種』
最初に接種を受けたグループは60歳以上の男女で、ほとんどの人が健康上の問題を抱えている、とバチカンニュースは報じている。
今回接種を受けた人たちは、信徒運動団体「聖エジディオ共同体」のメンバーが働くバチカンの最新の保護施設や「神の愛の宣教者会」が運営する別の保護施設で暮らしている。
バチカン・ニュースの当該記事に貼付されているYouTube動画(※本記事冒頭動画)では、人々がワクチン接種同意書のような書類に記入している様子が映し出されています。
新保護施設に住んでおり、足がなく、車椅子に乗っているマリオさんが「私たちは教皇様からの贈り物に感謝しています」と述べているともバチカン・ニュース記事は伝えています。
しかしながら、ホームレスの人たちが新型コロナウイルスワクチン接種に同意し、感謝しているとはいっても、今回のバチカンの措置は適当だったのでしょうか。記事中には書かれていませんが、彼らが接種したワクチンは、教皇様方と同様にファイザー/ビオンテック製のmRNAワクチンだと考えられます。
ファイザー/ビオンテック製mRNAワクチンは、いまだ臨床試験段階であり、公開されている両企業の治験・臨床研究情報(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04368728)によれば、推定研究完了日は2023年1月31日です。
当該ワクチンについては、WHOは緊急承認、EUでも条件付き製造販売承認(承認の期限を1年ごとに更新)という扱いです。
ファイザーのアルバート・ブーラCEOは、2020年12月14日時点では自社開発ワクチンを打っておらず、テレビ出演時に「私は59歳で比較的健康なので、ワクチンをもっと必要としている他の人々より先に接種するのはまるで適切ではありません」と発言しています。(拙記事参照)
ビオンテックのウール・シャヒンCEOも、1月14日時点では接種していません。米CNBCテレビの取材に対して「私を含めたメンバーが今後数週間内に投与の対象になることを期待している」と語ったとのことですが、その後接種したとの報道はまだありません。
※ 参考:ワクチン開発の独ビオンテックCEO、接種はまだ受けず(2021年1月14日付け、CNN)
世界初実用化のmRNAワクチンを、開発企業のCEOらは即座に打っていないのです。
バチカン・ニュースのイタリア語版記事によれば、ホームレスのたちの多くは、実際には注射や針、ワクチンの禁忌症(有害な作用が生じる可能性が高いために、特定の治療法や処置を適用できなくさせるような症状または病態)を恐れていました。
医療従事者たちはワクチンの効果や長期的な利点について彼らに説いていたとのことです。怖がる人たちに対して、なぜ説得までして打たせようとしたのでしょうか。
保護施設で働く「聖エジディオ共同体」のカルロ・サントーロさんは、「全員にとって、この行為の重要性がすぐには感じられないとしても。パンデミックから抜け出すための唯一の希望はワクチン接種を受けることなので、彼ら全員にとって、それは解放になるでしょう」と述べたといいます。本当に彼らにとって「解放」となるのでしょうか。
たとえ、短期的な副作用(副反応)がすぐに出なかったとしても ― アメリカではファイザーとモデルナ製mRNAワクチン接種による「報告」死亡者数は1,170名ですが(12月14日から2月7日までのデータ;CDC情報) ―、遅発性の副作用については未知です。
幸運にも副作用が生涯出なかったとしても、現時点で安全性が不明な「ワクチン」を打つという行為自体が、人体実験に他なりません。
(mRNAワクチンについては、実際には従来のワクチンではなくて「遺伝子治療薬」という観点でも警鐘を鳴らしている専門家もおられます。)
今回のホームレスの人たちへのワクチン接種については、バチカンが垂直次元のみならず、水平次元、すなわち隣人愛についても混乱していることを如実に表す出来事だと、私個人は考えています。
本件について書くかどうか迷っていましたが、教会における看過できない出来事について、日本語情報としてもインターネット上に記録を残すべきだろうと考え、わざわざ記した次第です。
本日2月17日は、日本でも医療従事者を対象にファイザー製mRNAワクチン接種を開始するというタイミングでもあります。
◆その他気になった点
カトリック新聞の上述記事では「保護施設内で感染事例が発生している」と書いていますが、イタリア語版バチカン・ニュースでは「casi positivi al coronavirus(コロナウイルスの陽性症例)」と記しています。
日本の教会が、検査陽性と感染とをいまだに混同しているという証左でしょうか。
2021年2月17日 灰の水曜日
あわれみの御母、われらのために祈り給え。